2009年12月13日

I wish I were a bird.

遠い遠い昔の
遠い遠い国のお話。

ある国の王子様と
その隣の国のお姫様が恋に落ちていました。

…しかしながら。

よくある話ではありますが、その2国の仲は非常に悪く。
国家間での紛争、戦争が後を絶ちませんでした。

このお話はその王子様のお部屋で起きる物語です。




「おぉ、姫…。隣国の姫よ…。どうしてわが国と貴国が争っているのだ…。
 私は…私はどうしてもキミに会いたい…っ!
 今すぐ鳥になって、キミの元に行きたい…っ!!」

そう、王子様が窓の外を眺めながら
悲しみにふけっている時。

王子様以外に誰もいない部屋で、
突然、声が響き渡りました。

「王子よ…。貴方、今『鳥になりたい』と申されましたか…?」
「…誰だっ!?」

王子様が部屋の中のその声がした方に目を向けると、
そこには黒いローブを着た一人の老婆が立っていました。

「…何者だ貴様っ!?どうやってここに入った!?」
「フフフ…。警備など私には無駄なのですよ…。
 扉も私にかかればすり抜けて進むぐらい造作もないこと…。
 私は“魔女”ですからな…。」

その“魔女”という言葉に王子様は目を丸くしました。

「ま、魔女だと…!?
 そんなもの実在するわけが…っ!
 …し、しかし警備と扉をすり抜けてきたのは事実…っ!!」
「信じられないのも無理はありませんが、事実でございます。
 …その証拠に、今から王子の望み、叶えて差し上げましょう…。」

『望みを叶える』という言葉を聞いて、
王子様は言葉をなくすほど驚きました。

「な…っ!?の、望みを叶えるだって…!?
 そ、そんな事が本当にできるのか…!?」
「はい…。
 王子の願いは『鳥になりたい』…でしたな…。
 その程度ならば私めにも可能でございます…。
 今すぐにその望み、叶えて差し上げましょう…。」

あまりに急激な展開に、王子様はひどく狼狽しましたが、
ここまで難なく侵入してきた魔女の様子から考えて、
願いが叶う千載一遇の機会が目の前に現れたことに、
王子様はもう疑う事はありませんでした。

しかし、王子様には一つの大きな疑問がありました。

「そうか…。魔女よ。そなたの言は信じよう。
 しかし、一つだけ訊きたい事がある。
 私が鳥になった後で、元の人間の姿に戻る事は可能なのか…?」
「…王子。それは無理にございます…。
 一度鳥になったが最後、人間には二度と戻れませぬ。
 …しかし、ご安心下さいませ。
 王子を鳥に変身させる時には必ず、
 隣国の姫が喜ぶような可愛らしい鳥に変身させます故…。
 今までとは違い、鳥と人間という関係にはなりますが、
 必ずや王子様は姫様に愛されるような姿になる事を保障いたしまする…。」

“人に戻れない”と聞き、王子様は深く悩みました。

…しかし。

(人のままでいたとしても、戦争中で姫には会えない…。
 ならば…。もしも、人間をやめる事になったとしても、
 姫と共に暮らせるのであれば、それはそれでいいのではないか…。)

そう考えた王子様は、ついに魔女にこう言いました。

「よし…。わかった、魔女よ。
 私は人間に戻れなくても構わない。
 姫と会えるなら…。姫と共に暮らす事ができるなら、私は鳥になろう!」
「はい…。
 でしたら、今から10秒ほど目をつむっておいて下さいませ…。
 その間に魔法をかけましょう…。」

その言葉に王子様は目をつむり、
ゆっくりと気を落ち着けました。

その直後、王子様は自分の体が何かに変化していく感覚を味わいました。
体が縮み、腕が羽毛のようになり、足が細くなっていく…。
そのような変化が王子様の身体に起こったのです。

「王子…。目を開けて下さいませ…。」

そんな魔女の声が聞こえて、王子様は目を開けました。
まず、王子様は魔女の背が随分と高く見えることに驚きました。
それで王子様は、自分の背が本当に小さくなった事を自覚しました。

次に王子様は自分がどんな鳥に姿を変えたのか確かめようと、
ベッドの横の壁にかけてある鏡の所まで飛ぼうとしましたが…。
まだ鳥になって間もないからか、王子様は上手く飛ぶことが出来ません。
仕方なく、王子様は鏡のところまでピョンピョンと跳んでいきました。

鏡に辿り着いた王子様が見たのは…。
本当に可愛らしい、一羽の白い鳥の姿でした。


王子様は自分の体に起こった変化に本当にびっくりして、
思わず、叫び声にも似た鳴き声を上げました。



「こ、コケコッコーーッ!!??」
(こ、これ可愛いけど…。に、“にわとり”じゃん!?
 ダメじゃん、姫の元に飛んでいけねーじゃん!!!?)


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2009年11月30日

本末転倒。

妻と買い物に出かけることにした。


久しぶりに妻と二人きりの買い物だ。気合が入る。
息子が生まれてから、本当に二人になれる時間が無かったのだ。
5歳になった息子を母の元に預け、出かける。
まるで昔、妻と行ってたデートみたいだ。

そう考えると、準備にも気合が入った。
財布にはお金がちゃんと入っているだろうか。家の鍵は?
ガスの元栓は閉めたかな?いやいや、そんな事より妻の事だ。
きっと“指輪を買って”とか“ネックレスが欲しい”とか言い出すに決まってる。
先読みして、知り合いの宝石商に安くなるかどうか電話連絡しておこうかな。
そして夕食は久しぶりにホテルのレストランでディナーというのはどうだろう?
そういえば、僕が妻にプロポーズしたのはあの場所だった。
妻はまだ覚えているだろうか。覚えているだろうな。
よし、今日はその時と同じコースを注文しよう。
結婚して息子が生まれて約7年ぶりのデートだ。楽しみだな。

そんな事を考えながら目的地に着いた僕は、
そこでようやくある大事な事に気付いたんだ。



――家から妻を連れてくるのを忘れてた。

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2009年11月12日

コスプレ…かな?

自分から選んだ仕事ではあるけれど、
デートスポットでの給仕の仕事はさすがに堪える。
立ちっぱなしというつらさに上乗せして、
自分が一人身であることを環境が知らしめてくるのは本当に厳しい。

…“時給が高い”なんてありきたりな理由で仕事を選んだ自分をバカらしく思う。
けど、仕事終わりで見るイルミネーションは悪くはなかった。
それを見てると、自分がここで働いている事に喜びを持てたりもするんだ。

…この景色をここに来てる連中と同じように、
彼女と見ることができれば本当に最高なのだろうけど。


そんな事を思いながら歩いていると、ふと、
目の前を歩いていた人のバッグから白い布が落ちるのが目に留まった。

「ハンカチ落としましたよ。」

僕はそう声をかけた。
すると目の前を歩いていた女性の身体がピクッと動いて、止まった。

止まった女性は、
こんなデートスポットでブラウンのスーツを着ていた。
きっと、この近くにオフィスがあって、
そこからの仕事帰りなのだろう。
ピンクのストッキングが艶かしい、
後ろから見ても立ち姿が美しい人だった。

(…振り向いたらどんな顔をしているのだろう。)
ふと、そんな考えがよぎる。

(美しい女性だったら、どうしようか。
 ここはデートスポットだからそのままお茶に誘おうかな?
 それとも、電話番号でも交換しようか。
 いや、でもいきなりデートや電話番号はまずい?
 メルアドならどうだろう?
 それから、それから…。)

思考が止まらない脳味噌。
(きっと、こういう所で運命の人に会えたりするのかな。)
なんて事まで妄想してる。

そして、振り返った彼女の顔を見て、
僕は胸を打ち抜かれたんだ。

お互いの心に発生したあまりにも強い衝撃。
その衝動に促されるように、
僕ら二人はお互いに声を掛け合った。


「あ、あんた今日仕事だったっけ、アキラっ!!??」

「こ、こんなデートスポットで何してんだよっ!?
 そしてなんで専業主婦なのにそんな格好してんだよ、母さんっ!!??

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2009年10月19日

冷たい彼

俺は冷たい男だ。しかも固くて意地っ張り。
そのうえ無口だ。だから、仲間もいない。
そんな俺にはこんな暗くて冷たい場所がお似合いなんだ。
ここにいるとなんだか落ち着く。楽になれる。

だが…。やっぱり退屈だ。
何とかして外に出たい。外に出て動き回りたい。
そう思っていると、いきなり扉が開いた。
なんという幸運だ。…なんて思わないぜ?
俺は知ってるんだ。
自分の身体が、動けないほどに固められているという事を。
だから、たとえ扉が開いても何の喜びもなかった。
むしろ、扉なら毎日幾度となく開くことを俺は知っていた。
連中は知ってるんだ。俺が脱出しようがないという事を。

しかし、その時は違った。
なぜかいつもすぐ閉じられるはずの扉がなかなか閉じなかった。
それを不思議に感じ始めた俺に、さらに不思議な事が起こった。
少しずつ身体が動くようになってきたのだ。
どうやら、扉が開いていると少しずつ自由になっていくようだった。

よし、もう少しで自由になれる。動き回れる。
俺は喜びで満たされそうになっていた。
もう少し、もう少しで…。よし、脱出完了だ。

俺は閉じ込められた部屋から脱出した。

その時、ようやく俺を閉じ込めた一味が現れた。
ひどくあせっている様子の一味の声を聞きながら、
俺はその部屋から消えた。



「あーっ!お姉ちゃん、冷凍庫の扉開けっ放しー!!」
「あ、ごめんごめん…。
 わー…。買っておいた氷、全部流れちゃってる…。」


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2009年10月02日

継続は力なり…?

…今日もまた、出会えないのかな。


『そんな事しても何もない』なんて考えたくないんだ。
だって、誰にも経験があるだろう?
こんな出会いに憧れた事。

だから、僕は中学生の頃から何年間も毎日コレを続けてるのさ。
毎朝の日課なんだ、これが。

だから、「もっと早く朝起きろ!」とか
「たまには朝にご飯を食べなさい!」とか
「そんな行儀の悪い食べ方は止めなさい!」とかみたいに、
毎日毎日、何度母親に怒鳴られようと
僕はずっとこんな風に登校してるんだ。

…そう。


つまり僕は、
『パンをくわえながら登校をして
 角を曲がった所でぶつかった女性と恋に落ちたい』のさ。


でも、そんな事なかなか上手くいくわけなんてない。
それは僕も理解してる。
理解してるからこそ僕は、
“何年間も”こんな事をやってるんだ。

熱々のパンを靴を履きながらくわえて、
遅刻時間ギリギリをわざと狙って登校するなんて行為を。

人に言ったら、“馬鹿げてる”なんて言われるんだろうけど。
そういう人には『“希望を持ち続けること”は大事なんだよ』って強く言いたい。

第一、
別に『パンをくわえて時間ギリギリに学校に行く』事が他人に迷惑をかけるじゃないだろう?
時間ギリギリに出てるだけで遅刻するわけじゃないんだから。…そう思わないかい?

…まぁ、母親には少し悪いとは思うけれど。

それにさ、
どんな事でも可能性はゼロじゃないんだ。
そして、僕はそんな出会いを強く望んでる。
…だったら、それを追わなくちゃ。
それに今止めたら、
『明日出会うかもしれないという可能性』すら失ってしまう。
そんな事、僕にはとても我慢できないのさ。


…けれども。
そうは思っていても、今日もまた、ここまで来てしまった。
この丁字路を左に曲がれば目の前は学校。…ゴールだ。

かじっていたパンはもう冷めて、固くなって、
もう一口かめばなくなってしまいそうになってる。

(今日もまた、ムダに終わってしまうんだろうな…)
そんな一言を心でつぶやきながら、僕は丁字路に向かって歩を進めた。


けれど、その丁字路に体を出して体を左に向けようとした瞬間。
僕の右側に何かがぶつかった感じがした。


「…いった〜い。ちょっと、ドコ見てんのよっ!!」


ふと横を見ると、
なんと、少女が尻もちをついてこっちを見上げてた。

口にくわえてた一口大のパンは
ぶつかった拍子に飛んでいってしまったけれど
僕にはそんなにぶつかった衝撃は感じられなかった。
けれど、彼女はあたり所が悪かったのだろうか?
明らかに顔と声には、怒りの表情が見えた。

…いやそうじゃない。
本当は、ものすごい衝撃を僕も受けていたんだ。

その証拠に、頭の中は不思議なくらい妙に冷めてるのに、
体はどんどん熱くなっていく。
こんな気分、生まれて初めてだ。

だけどそれは、『ぶつかった衝撃』の事じゃない。
そう、僕にはぶつかった衝撃なんてどうでも良かったんだ。

…『夢が叶う』という衝撃が心に芽生え始めていたから。

彼女が痛そうにしているのは本当に申し訳ないとは思うけれど、
それ以上に、僕の心臓の鼓動がどんどん加速していくのが気になる。
思わず自分の胸に右手を添えた。

ほんの少しだけ、自分の体が落ち着きを取り戻した気がした。
ちょっとだけ深呼吸をして、彼女の方を見る。

ぶつかった少女の表情は、朝の光に照らされて、
怒りを表した顔すら、物凄く輝いて見えた。

(ヤバイ…もろタイプだ…。)

心臓の鼓動はもう、心臓を張り裂こうとするほどに強くなっていた。
長い間夢に見ていた願いが、叶う。
その喜びで思考は失われそうになっていた。

(…でも、まだだ。)

自分の中にいる、なんとか平静を保っている
冷めた頭の中の自分が僕に声をかけた。

そうだ、まだだ。
まだ、出会っただけなんだ。
これを恋に発展させないといけないんだ。

そう思い直して、
どうにか平静を装いつつ、その少女に声をかけようと…した。

「…あっ!」

その時だった。
突然彼女がびっくりしたような声を出して、
僕の顔をまじまじと眺め始めた。

そして、ちょっとうつむくように顔を下に向けながら
目の前の少女がゆっくりと立ち上がった。

ちらりと見えた
うつむいた顔は真っ赤に染まっていた。
その顔は、何かはにかんだようにも
恥ずかしそうにも見えた。

「あ、あの…っ!」

切れ切れに出てくる少女の声。
その声は、さっきの怒りから来る言葉とは全く違う優しい声色になっていた。

…それはまるで、そう、
自分の内にある、他人にはいいづらい想いを
なんとか伝えたい相手に伝えようとするような…。

つまり『恋の告白』をするような――そんな感じの声だった。

え、まさか、
この子の方から――!!

そう思うと、本当に心臓が張り裂けそうになった。
信じられないほど強い鼓動音。胸が苦しくなってきた。
右手を胸に当てていても全く収まらない。

この心臓は僕にはもう制御できそうにない――。
そんな風に、感じた。

そんな僕の苦しみを癒すような感じで、
少女は必死になりながら、僕に言葉をかけてきてくれた。

顔を見られるのが恥ずかしいのか、
頭を更に下に向けながら、
少女は僕に、こう声をかけたんだ。



「ぶ、ぶつかってごめんなさい!!
 
 えっと、そ、それと…。
 
 
 …カツラが飛んでますよ、校長先生っ!!」

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